渋谷Dommuneの爆クラ第87夜「反骨のクラシック」にてDJとして出演してきた。楽器を持たないで会場に行くなにか忘れ物ある感と、会場入りして「DJの方入られま?す」のむずがゆさを感じながらも1部、2部を通して途切れることのない湯山玲子さんの濃密なトークセッションを拝聴しながらだんだんとテンションが上がっていった夜更け...??テーマは「反骨のクラシック」、音楽家はどんな時だって演奏し、作品をのこしてきた。とりわけ民衆による革命や戦禍など、世の中が混乱しているときこそその意欲は増したといえる。後世(を意識していたかは別として)に音楽芸術をどのように継承していくか、または体制への反発など、「音楽家それぞれの反骨精神」があったといえるのではないか。セットリストは以下のように。
1. Bach: Goldberg Variationen BWV988 Aria -Glenn Gould1955
バッハ:ゴルトベルク変奏曲BWV988 アリア?グレン・グールド(1955年収録)
今回のテーマを聞いて思い浮かんだのは反骨や反逆精神というのは安寧を求めているからこそ生まれるのではないかということ。1曲めはこれしかない!という気がした。
2. 山田耕筰:曼荼羅の華?外山雄三 NHK交響楽団
Kohsaku Yamada: Mandara no Hana -Yuzo Toyama, NHK Symphony Orchestra
3. Mossolov: Zavod(Iron Foundry)Op.19-Riccardo Chailly, Royal Concertgebouw Orchestra
モソロフ:鉄工場 作品19?リッカルド・シャイー、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団
4. Rachmaninov: Symphonic Dances Op.45-Andre Previn, London Symphony Orchestra
ラフマニノフ:交響的舞曲 作品45?アンドレ・プレヴィン、ロンドン交響楽団
5. Liszt: Totentanz Oaraphrase uber “Dies irae”S.126-Georges Cziffra, Georges Cziffra Jr. Orchestre de Paris
リスト:死の舞踏ー『怒りの日』によるパラフレーズ S.126ージョルジュ・シフラ、ジョルジュ・シフラ・ジュニア、パリ管弦楽団
6. Rachmaninov: Toteninsel Op.29-Sergei Rachmaninov, The Philadelphia Orchestra
ラフマニノフ:死の島 作品29ーセルゲイ・ラフマニノフ、フィラデルフィア管弦楽団
7. Varese: Arcana-Riccardo Chailly, Royal Concertgebouw Orchestra
ヴァレーズ:アルカナーリッカルド・シャイー、ロイヤルコンセルトヘボウ管弦楽団
8. Mozart: Piano concerto No.20 K.466 1st mov. Cadenza by Beethoven
モーツァルト:ピアノ協奏曲第20番K.466 第1楽章 ベートーヴェンによるカデンツァークラウディオ・アバド、フリードリヒ・グルダ、ウィーンフィルハーモニー管弦楽団
2?8までの曲は20世紀初頭のめまぐるしく不安定な情勢や、スペイン風邪のパンデミックなどからくる死への不安をテーマにした。「怒りの日(Dies irae)」の主題をテーマにした作品、ソ連の重たく暗い雰囲気を映した作品など。8.はなんでモーツァルト?となるかもしれないが、このPf協20番がラジオから流れてきたのを、涙を流して聴き入ったというエピソードは大粛清の真っ只中のスターリンにまつわるものである。
個人的には主題や作品同士の関連にこだわったつもりだが、実際ライブスタジオで流すと体感時間も短いし、なにより作品のバックグラウンドを説明する余地がないため、うまく伝わったかどうかわからないなぁ..
9. Satie: D’Edriophthalma-Pascal Roge
サティ:『胎児の干物』より甲殻類の胎児ーパスカル・ロジェ
10. Tavener: The Lumb-Peter Phillips, The Tallis Scholars
タヴナー:神の子羊ーピーター・フィリップス、タリス・スコラーズ
11. Brass: Ethings for String Quartet(2016)-Quartet Amabile
ブラス:エッチングーカルテット・アマービレ
12. Reich: Different trains 1.America, Before The War-Kronos Quartet
ライヒ:ディファレント・トレインズ 1.アメリカ第二次世界大戦前ークロノス・カルテット
13. Reich: Drumming Part1-Steve Reich &Friends
ライヒ:ドラミング 1ースティーブ・ライヒ&フレンズ
14. Reich: Different trains 2.Europe, During The War-Kronos Quartet
ライヒ:ディファレント・トレインズ 2.ヨーロッパ第二次世界大戦中ークロノス・カルテット
15. Reich: Drumming Part4- Steve Reich &Friends
ライヒ:ドラミング 4-スティーブ・ライヒ&フレンズ
16. Reich: Different trains 3. After The War-Kronos Quartet
ライヒ:ディファレント・トレインズ 3.第二次世界大戦後ークロノス・カルテット
17. Reich: Nagoya Marimbas-Bob Becker, James Preiss
ライヒ:名古屋マリンバーボブ・ベッカー、ジェームズ・プライス
18. 一柳慧:ピアノとオーケストラのための「空間の記憶」?外山雄三, NHK交響楽団
Toshi Ichiyanagi: Piano Concerto Reminiscence-Yuzo Toyama, NHK Symphony Orchestra
9?18までは直感的に組み合わせたらカッコいいのではと思ったものと、DJの醍醐味ともいえるMIXとやらに挑戦したく、ライヒの作品で決行した。結果はどうなっていたのかわからないが(記憶にありません)、ディファレント・トレインズ3曲にドラミングを組み合わせて時の移ろいは止まらぬままMIXできていたらいいなあ。ライヒを出したあたりで現場の有識者が沸き立ったので、名古屋マリンバを急遽追加。
19. Beethoven: Symphonie Nr.6 Op.68 “Pastoral” 4.Satz Allegro ”Gewitter, Sturm”-Hans Schmidt-Isserstedt, Vienna Philharmonic Orchestra
ベートーヴェン:交響曲第6番『田園』作品68 4楽章『雷雨、嵐』
20. Schonberg: Verklarte Nacht Op.4 -Pierre Boulez, New York Philharmonic Orchestra
シェーンベルク:浄められた夜 作品4 ーピエール・ブーレーズ、ニューヨーク・フィルハーモニック
強烈な標題を持つ2曲、Pstorale(田園)とVerklarte Nacht(浄められた夜)。どちらの作品においても激しさや深刻な描写をしている部分を選択した。ライヒは前出ディファレントトレインで、自身がユダヤ人であることから「もし、ユダヤ人である自分があの時代にヨーロッパにいたらどうなっていただろうか?おそらく、強制収容所行きの、全く違う汽車(Different Trains )に乗ることになっていたのではないか?」という考えのもとに作曲したという。ホロコーストというテーマを伏線に、19、20をブリッジとして次のセクションへ。
21. Bruckner: Fanfare aus Symphonie Nr.3-Karl List, Munich Reichssenders Orchestra
ブルックナー:交響曲第3番より用いたファンファーレーカール・リスト、ミュンヘン帝国放送管弦楽団
22. 1934年9月5日、ニュルンベルク・ナチ党国家党大会におけるアドルフ・ヒトラーの演説
23. Wagner: Die Meistersinger von Nurnberg Vorspiel zum 1. Aufzug-Lovro von Matacic, NHK Symphony Orchestra
ワーグナー:ニュルンベルクのマイスタージンガー序曲ーロヴロ・フォン・マタチッチ、NHK交響楽団
24. Wagner: Lohengrin Act I Scene 3 - Wenn ich im Kampfe fur dich siege-Rene Kollo, Anna Tomowa-Sintow, Herbert von Karajan, Berliner Philharmoniker
ワーグナー:ローエングリンより『我が闘争にあるとき』ールネ・コロー、アナ・トモーヴァ・ジントウ、ヘルベルト・フォン・カラヤン、ベルリン・フィルハーモニー管弦楽団
25. 1934年3月6日、ライプツィヒのリヒャルト・ヴァークナー記念碑着工式におけるアドルフ・ヒトラーの演説
26. R.Strauss: Festmusik zur Feier des 2600jahrigen Bestehens des Kaiserreichs Japan fur groses Orchester Op.84-R. Strauss, Die Bayerische Staatsoper.
R.シュトラウス:大管弦楽のための大日本帝国紀元二千六百年祝典音楽 作品84-リヒャルト・シュトラウス、バイエルン歌劇場管弦楽団
27. R.Straus: MetamorphosenOp.64-Rudolf Kempe, Staatskapelle Dresden
R.シュトラウス:メタモルフォーゼン『変容』 作品64-ルドルフ・ケンペ、シュターツカペッレ・ドレスデン
21?27はナチスドイツが最もおごり高ぶったであろう、1934年当時?はどんな雰囲気であったかを再現してみた。「長いナイフの夜」や、ヒンデンブルクの死去など、俯瞰してみれば「ついに後戻りできない状況」になったとき、そしてそこに加担したR.シュトラウスの、戦後の様変わりした状況の描写までを。
28. Prokofiev: Romeo&Juliet Suite Op. 64 Montagues & Capulets-Riccardo Muti, Chicago Symphony Orchestra
プロコフィエフ:ロメオとジュリエット組曲 作品64 モンタギューとキャピュレットーリッカルド・ムーティ、シカゴ交響楽団
29.伊福部昭:交響譚詩?外山雄三 NHK交響楽団
Akira Ifukube: Ballata Sinfonia-Yuzo Toyama, NHK Symphony Orchestra
30. Shostakovich: Symphony No.11 Op.103"The Year 1905" 4.mov. “Toscin”- Evgeny Mravinsky, Leningrad Philharmonic Orchestra
ショスタコーヴィチ:交響曲第11番 作品103 『1905年』第4楽章 『警鐘』ーエフゲニー・ムラヴィンスキー、レニングラード・フィルハーモニー交響楽団
28?30のセクションは、「不条理」「悲劇」「民族」のようなテーマを、なおかつ前半の雰囲気に戻ってくる空間にしてみたいと思った。
【Da Capo】Bach: Goldberg Variationen BWV988 Aria Da Capo-Glenn Gould1981
バッハ:ゴルトベルク変奏曲 BWV988 アリア ダ・カーポーグレン・グールド(1981年収録)
バッハで始まり、バッハでしめる(視聴者で冒頭のグールド1955年盤と最後の1981年盤に気づかれている方が多く、ビックリ..??)。終わりではなく、輪廻転生、時代も回って、様々な出来事も繰り返される。反骨精神も安寧があってこそのもの。音楽もこの先、世に出る作品のスタイルがバッハ、はたまたそれより前のスタイルに循環する日も近いのでは?という投げかけで締めくくった。